LinkIconEnglish Page
印刷用表示 |テキストサイズ 小 |中 |大 |


一般社団法人日本精神分析的自己心理学協会が定める倫理規程の第3条に基づき、同規程別項として本倫理綱領を設ける。



前文


倫理的な行動の究極の基準は何かといえば、一般社団法人日本精神分析的自己心理学協会研究グループ正会員・準会員(以下「会員」という)の個々の良心の中に存在するものである。それでも、当協会は、協会自身のものとして、会員が遵守すべき基準や行動についての最低限の内容を決めなければならない。これらの基準は、以下に説明されるが、それはつまり、患者の福祉、治療者の保護、そしてコミュニティの安全性が、治療者の行動を主として決定しているという前提に基づいている。協会のすべての会員は本倫理綱領に準拠し、それらを遵守していないという訴えが為された場合には、同僚の会員による判断を最終的に受け入れることが期待されている。


この倫理綱領は、会員の精神分析的心理療法ならびに心理臨床にかかわる活動に対するものである。そこには、精神分析の臨床実践、研究、教育、研修生のスーパービジョン、組織やグループ、家族への臨床が含まれている。この「会員の精神分析的心理療法ならびに心理臨床にかかわる活動」には、この綱領の範囲内ではない会員の純粋に私的な活動は含まれない。


会員がこの倫理綱領に違反したかどうかは、それ自体で、彼または彼女が法的責任を負うかどうかを決定するものではない。訴訟、契約が強制可能であるかどうか、または他の法的な結果が発生するかどうか。これらの結果は、法的ではなく、倫理的なルールに基づいている。


この綱領は、JFPSPに登録された精神分析家と精神分析的心理療法家だけでなく、研究グループ正会員・準会員の活動をカバーするものである。


1.患者等(スーパーバイジー・訓練生を含む)との関係


第1条  会員は、自分自身と患者等の間で作業内容の合意を決定し、明確化する責任を負う。会員は、そのために、セッションの長さと頻度、支払の金額と方法、治療の性質と予測、キャンセルの条件、そして、セッションはどこでいつ行われるのかについて、治療開始後できるだけ早い段階で患者等に伝えなければならない。他の契約上の取り決めについても、治療中必要が生じた場合、議論されなければならない。
2  患者等は知る権利がある。したがって、必要になったときにはできるだけ早く、守秘義務の法的限界を知らされるべきであり、分析の中で明らかになった情報が、どのような条件のもとで、誰に対して知らされる可能性があるのかについて伝えられなければならない。必要に応じて、会員は患者等には、治療には他の形態があることを伝えるべきである。
3  会員は法のもとに請求される場合を除き、患者等によって治療の過程で明らかになった情報の守秘を尊重する義務を負う。
4  会員は記録の保管及び処分の機密性を維持するための対策をとらなければならない。会員は、患者本人、またはその親または保護者からの書面による承諾を得た場合、あるいは、適切な法的請求の下に限り、分析等で得られた情報を公開することが許される。


第2条  会員は、自らの学術的および/または専門的な訓練および/または経験、あるいは、自分の専門的所属を偽ってはならない。また精神分析/精神分析的心理療法の限界について、患者等に対しても、公に対しても偽ってはならない。


第3条  会員は、自分の能力や職業境界を超えた診断(心理学的判断を含む)、処方、治療、または、アドバイスをしてはならない。
2  スーパービジョンやコンサルテーションを除き、会員は、自分の専門的活動を通して得られた個人的な情報を提示する前に、患者等から同意を得なければならない。また、その情報に含まれるすべての個人的内容は特定できない様に記述されなければならない。(第13条参照)


第4条  会員は、自身の親しい友人や親戚の治療も含め、二重の関係をできるだけ回避しなければならない。ただし、訓練研究所に定められたカリキュラムによって生じる不可避的な多重関係はその限りではない。
2  ヒトを対象とした研究に関する法律、条令、指針を尊守して、会員は、心理療法の患者でもあり、研究対象でもある二重の役割を持つ患者等からは、署名による同意を得なければならない。
3  会員は、患者等がそのような行為を求めたり、同意する、あるいは同意があったとしても、性的な性質を帯びた身体的接触を回避しなければならない。
4  会員は、治療等の停止または終了後、少なくとも2年間は、元患者と性的に親密な関係をもってはならない。なお、2年間の経過については、次の5項に照らし合わせて倫理委員会の審議を経て、理事会の承認を得なければならない。
5 治療の停止または終了後2年経過した後、そのような行動に関わる会員は、以下の関連情報に照らして、そこにいかなる搾取的関係もなかったことを証明するという負担を負う。(1)治療が終了してから経過した時間数、(2)治療の性質と期間、(3)終了の状況、(4)患者の個人史、(5)患者の現在の精神状態、(6)患者やその他の人に対する悪影響の可能性、(7)治療中、及び治療終了後に性的、または親密な関係の可能性を患者に勧めたり、示唆したりするような治療者の言葉や行動。
6  会員は、自らの専門的な関係を、いかなる場合であっても個人的利益〔自らのビジネス、政治的、あるいは宗教的な利益〕を拡大するために、(第1条に定める分析、治療等以外に)用いてはならない。
7  会員は、分析、治療等と引き換えに、患者から、もの、サービス、他の非金銭的な報酬を受け取ることを控えなければならない。なぜならば、そのような行為は、本質的に、専門的関係の相反、搾取、そして歪みを本質的に生み出すような可能性があるからである。会員がものを交換してもかまわないのは、(1)それが明らかに臨床的に禁忌ではなく、(2)関係が明らかに搾取的ではない場合のみである。


第5条  会員は、患者等やスーパーバイジー、訓練生、同僚の法的権利および公民権を奪ったり、減らしたりするようないかなる行為も行ってはならない。


第6条  すべての会員は、倫理的苦情に対する調査で、協会の規則と手続きに協力する義務がある。


第7条  専門的意見を表明するとき、会員は、理事会によって承認されたものを除き、それが当協会を代表するものとか、公式見解を意味するものだという趣旨の発言をしてはならない。


第8条  患者等が分析から利益を受けていないことが合理的に明らかである場合、会員は分析関係を終了しなければならない。


第9条  適切な場面で、会員は患者等がその代わりとなるサービス資源を見つけるのを援助しなければならない。


2.同僚との関係


第10条  同僚が治療中である患者についてのスーパービジョンや、コンサルテーションを行うことに同意した場合、会員は、患者と患者の治療者がその交代を望まない限り、将来にわたって、その患者の治療者になることはできない。


第11条  会員は、患者を他の専門家に紹介するという行為に対して、対価を受け取ってはならない。


第12条  会員は、自分の論文や研究に貢献した人や、直接的に影響を与えた人の名前を明記しなければならない。


第13条  同僚と相談するときには、(1)会員は、個人または組織の同意を得ている場合、あるいは、開示を回避することはできない場合を除き、自分が守秘義務を有する患者が誰なのかが合理的にわかる可能性のある機密情報を共有しない、あるいは(2)コンサルテーションの目的を達するのに必要な範囲でのみ情報を共有する。


附則 本綱領は,平成28年1月11日より施行する。

一般社団法人日本精神分析的自己心理学協会 倫理規程
平成28年2月1日 理事会制定 改訂 平成30年1月22日 理事会制定

(趣旨)
第1条  この規程(以下「本規程」という。)は,一般社団法人日本精神分析的自己心理学協会(以下「本協会」という。)常任委員会・特別委員会規定の第2条に基づき,本協会研究グループ準会員・正会員(以下「会員」という。)に関する倫理問題への対応について必要な諸事項を定める。

(目的)
第2条  本規程は,本協会倫理綱領に基づき,会員が行う精神分析的心理療法ならびに心理臨床にかかわる活動における倫理について,その適正を期することを目的とする。
第3条  本協会は,会員がその専門業務等に従事するに当たって遵守すべき事項に関する倫理綱領を,別に定める。
第4条  本協会は,第2条及び第3条に係る事項を審議するために,倫理委員会(以下「委員会」という。)を設立することができる。

(委員会の業務)
第5条  委員会は,前条の目的を達成するために,本協会代表理事(以下「代表」という。)の指示のもとに,次の業務を行う。
(1)会員に対して申し立てられた倫理的苦情に関する対応
委員会に訴える権利を持つのは,現在あるいは過去に,会員と,治療,スーパービジョン,あるいは他の専門的関係をもっていたか,または協会の会員によって直接傷害を(たとえば,家族に対して傷害を与えることは含まない)受けたと主張する個人である。患者が未成年または成年被後見人,あるいは死亡している場合は,その家族が委員会に苦情を訴えることができる。
(2)会員に対して申し立てられた臨床業務とは必ずしも関係のない差別、ハラスメントに関する苦情への対応
(3)その他,代表が必要と認める業務

(設立)
第6条 委員会は、第9条に定める手続きにしたがって、理事会が申し立て人から署名付きリリースを受信した場合に、申し立て案件ごとに理事会の決議により設置される。

(委員会の構成)
第7条  委員会は,本協会理事会より選出された理事1名,協会の教員およびそれに準ずる見識をもつ者(ただし理事を除く),外部の有識者1名を入れて構成すること。
2  委員長は,本条第1項の理事が代表の指名を受けて就くものとする。
3  副委員長は,委員の互選とする。

(委員会の運営)
第8条  委員長は,委員会を開催し,議長となる。
2  委員会は委員の3分の2以上の出席をもって成立するものとする。
3  委員長が事故や疾患等によって職務を全うできない場合は,副委員長が委員長職務を代行して行う。
4  委員会の役割は,苦情申し立ての内容を調査し理事会に報告することであり,処分を決めるものではない。

(苦情の受理と手続き)
第9条  第5条(1)に定める業務について,理事会が苦情を受理した場合には,申立人は,書留郵便で,委員会が当該の被申立人に訴状を送ることに同意するようリリースフォームへの署名を要求される。
2  申立人が理事会による要請後30日以内に,理事会に署名付きリリースフォームを送付しなかったときは,会員に対する提訴は取り下げられる。
3  理事会による要請後30日以内に申立人からの署名付きリリースフォームを理事会が受信したときは,理事会は倫理委員会を設立しなければならない。委員会はただちに以下の手続きに進む。(1)申立人の文面から,被申立人が抵触したかもしれない,本協会の倫理綱領とともに訴状を検討する,(2)苦情処理の手続きに進む。
4  委員会はその後,被申立人が申し立てに対する意見を述べる機会を与えるために個別にヒアリングの機会を組む。場合によっては,申立人,被申立人と委員による合同ヒアリングが組まれることもある。
5  申立人と被申立人は,いつでも自由に,委員会との追加の会合の機会を要求したり,書面で連絡を取ったりすることができる。

(苦情の処遇)
第10条 第5条(1)に定める業務については,委員会は,多数決によって,個々のケースに応じた適切な処遇を行う。以下は調査結果の可能性のあるカテゴリである。
(1)申し立ての却下
(2)正当な苦情の承認と,非倫理的な行動への申し立ての却下
(3)倫理的な違反ではないが,専門的とはいえない行動の特定
(4)非倫理的な行動の特定

(報告)
第11条  第5条(1)に定める業務については,委員会は,被申立人と理事会に対し,代表から処遇案の答申を附託された日より起算して6ヶ月以内に,その調査結果と処遇について文書で通知しなければならない。
2 上記以外の業務については,その内容について,必要に応じて代表に報告する。
3 申立人への結果の通知は、理事会によってその必要性および通知内容を判断する

(処分)
第12条  第5条(1)に定める業務については,委員会が被申立人に対する訴えをすべて棄却した場合でないかぎり,理事会は,その事実と委員会の勧告を考慮したうえで,会員に対する制裁を決定しなければならない。
2 制裁は以下のことを含むが,それに必ずしも限定されない。
(1)会員に対する注意
(2)苦情につながった問題解決の最終決定を保留し,会員資格の一時停止。理事会は,会員に対して追加のスーパービジョンや個人分析を行うように勧告する(注)
(3)会員資格剥奪
(4)日本臨床心理士資格認定協会への通知
(5)雇用者への通知
(6)問責決議

(注)治療者,および/またはスーパーバイザーは,JFPSPに登録された認定精神分析的心理療法家であり,かつその進捗度合いや,申立人の協力内容について,理事会に報告しなければならない。

第13条  第5条(2)に定める業務については,委員会が被申立人に対する訴えをすべて棄却した場合でないかぎり,理事会は,その事実と委員会の勧告を考慮したうえで,会員に対する制裁を決定しなければならない。
2 制裁は以下のことを含むが,それに必ずしも限定されない。
(1)会員に対する注意
(2)苦情につながった問題解決の最終決定を保留し,研究グループを除く本協会の活動への参加を一時停止する
(3)研究グループを除く本協会の活動への参加の一時停止
(4)研究グループを除く本協会の活動への参加の永久停止
3 処分を行うに際し,可能な限り処分範囲を限定することで,会員の権利を確保することに努める。

(不服申し立て)
第14条  第5条(1)(2)に定める業務については,申立人と被申立人のどちらも,委員会の調査結果や,それらの結果に基づいた理事会の処遇・制裁に不服な時は,理事会に直接不服申し立てをすることができる。理事会はその結果を委員会に伝える。
2  不服申し立ては,書面によって,直接理事会に対してなされなければならない。そして,それは処分の決定が申立人/被申立人に受理されてから30日以内に届けられなければならない。

(守秘)
第15条  いかなる場合であっても,委員会,倫理委員,理事会,事務職員,または協会に所属する者はすべて,その職を解かれたのちにも,日本精神分析的自己心理学協会外の組織や個人に対して,第12条2に定める場合を除き,倫理的申立,それに対する検討や決定を漏らしてはならない。ただし,適切な法的命令がある場合や,被申立人からの書面による同意がある場合は,その限りではない。

(解散)
第16条  委員会が被申立人に対する訴えをすべて棄却してから30日を経過した場合,または,被申立人から処分の決定がなされてから不服申し立てが30日なされなかった場合,委員会は理事会の決議により解散する。

(改廃手続き)
第17条  本規程の改廃は,本協会理事会の議を経て,代表がこれを行う。